22.怪しい店　角川書店 2014年10月31日発行

収録作4.「潮騒理髪店」（『小説野性時代』2014.06月号初出）
収録作5.「怪しい店」（『小説屋sari-sari』2014.09月号初出）

どんなお話だったか後でわかる程度の情報とちょっとした感想を。

以下ネタバレあり

収録作4.「潮騒理髪店」
火村一人旅の事象を、アリスに話すお話。
講義の合間、研究室から用事でアリスに電話した火村。
仕事に詰まっていたアリすは『火村に創作が進まないことをこぼす。甘えというやつだ。
対して火村の返答「仕事なんだから、がんばるしかないだろ」
「季節もいいんだし、気分転換にどこかに行ってきたらどうだ。連休が終わって空いてるぞ。近場で一泊してこい」』
との会話のあと繰り広げられるお話。
煮詰まってるアリスに気分転換をさせてくれる火村ですね。
何でもかんでも人の行動を推理してしまう火村・・・

＜場所＞
鄙びた漁村
＜時代＞
アリスの頭の中ではヒロインは堀○真希を起用（笑）
＜火村＞
アリスの中でロードショーに変換されているのでそのまま火村の感想かは微妙だが、時間つぶしの理髪店で熟練の技に気分良く極楽極楽～となっている火村はちょっと貴重。
ご機嫌な火村。あぁなんて貴重(笑）
＜登場人物＞
理髪店店主、役場のリカちゃん
＜トリック＞（反転）
憎き上司を呪うため（？）髪の毛を理髪店に拾いに行ったものの、理髪店店主に心洗われ拾った髪の毛を捨てる姿が火村には電車に向かってハンカチを振る姿に見えた。

収録作5.「怪しい店」
こちらは火村がアリスをフィールドワークに連れていく理由等がなかなか興味深く話題に出てきます。火村と言う人が少し見えてきます。

＜場所＞
大阪京橋「みみや」
＜同行方法＞
火村より「フィールドワークのアシストで有意義に過ごせるかもしれないけれどどうする？」と誘われた。
＜フィールドワークにアリスが同行することについてアリスの視点＞
１．殺人事件の深奥に触れる経験は、作家としての私（アリス）に小さからぬ影響を与えているはずだ。火村は助手が欲しいのではなく、そんな経験を積ませるために私をフィールドワークに呼びつけるのではないか、と思う事がある。
自慢ではないが私は助手もどきぐらいしか務まっていない。
２．アリスに自分のフィールドワークを見てもらいたいのかもしれない。危うく切羽詰まったものがあり、私（アリス）の助けを本当に必要とする場面がいつかあることを予期しているような気もする。
・・・この二つ目の視点はよく語られていましたが、一つ目のアリスに経験を積ませてあげるため、というのはいままでどこかで出てきたかな？私自身の感想としては常々持っていたんですが。
＜火村にとっての助手アリス＞
１．どっちへ進めば行き止まりかを示す役割を果たしている。（アリスが聞いた話）
２．犯人が判った後、アリスと話していると犯行の動機がよく理解できるようになる。特異な心理の場合は特に参考になる（コマチさんが聞いた話）
＜火村のフィールドワークについて・アリスとコマチさんの会話＞
コマチ「殺人事件の捜査に参加するのを研究手段にするのはどうしてか」
アリス「逮捕する前の犯人を観察できるから」
コマチ「誰よりも早く犯人の仮面を剥ぐのが使命と考えてるように見える」
アリス「すごい屈折があるらしい。どれだけ折れ曲がってるのか、自分でもわかってないでしょう」
コマチ「どんな理由で誰を殺したいと思ったんでしょう」
アリス「知り合ってから何年か経った頃尋ねてはぐらかされてそれっきり。訊くタイミングを逃したら二度と訊けないことがある」
コマチ「私が訊いてみようかな」
アリス「コマチさんにあっさり口を割ったらショック」
コマチ「本当は言葉に出して言いたいんじゃないでしょうか？何かが栓をしているだけで」

・・・・コマチさん素晴らしい！
コマチさんは火村とアリスに好意的じゃないのかな、と思ってたけど株急上昇です。

＜火村＞
白い半袖シャツにゆるく締めたネクタイ
＜アリス＞
近所の喫茶店へ行くには花柄の派手なシャツ・・・・。
最寄駅：地下鉄四天王寺前夕陽ヶ丘駅
もらい泣きしやすい。
＜登場人物＞
人の悩みを聞く「みみや」店主（被害者）
＜トリック＞（反転）
被害者は聞いた悩みの裏付けをとってから脅迫を繰り返していた。
被害者の夫が真似をしようとボイスレコーダーを設置。
ボイスレコーダーから被害者夫の愛人が殺したことが分かった夫は証拠のレコーダーを処分しようとする。

22.怪しい店-4.5.「潮騒理髪店」「怪しい店」